田口音響研究所

INTERVIEW 01 | 2016.11.10
東京都江東区

音の本質とは?
美しい音がうまれる場所

Taguchiスピーカーが奏でる音はすっと耳に入り、目に見えない音としてのリアルをどこまでも再現しています。本当に美しい音は、耳の奥だけではなく胸の奥にまでも響き渡るように感じられます。

第1回目のインタビューは、Taguchiスピーカーを制作する「田口音響研究所株式会社」を訪ね、スピーカーづくりを通して「音」について探求します。制作途中のスピーカーが並ぶ新木場の工房におじゃまして話をうかがいました。


01 音の本質を追求する、Taguchiのスピーカー哲学

Taguchiスピーカーを生み出した田口和典さんは、音をつくるエンジニアでありアーティストのような存在です。自然と文化が混在する鎌倉の地で育ち、撥弦楽器の音に魅せられて独自の感性を育みました。大好物の旬のフルーツを味わうように、日々いい音とは何かを追求しています。そんな田口さんの音やものづくりにおける哲学とはどんなものでしょうか?

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ー 田口さんは長年、音に携わったお仕事をされていますが、音とはいったい何なのでしょうか?

田口:
宇宙の根源的なエネルギーの波動かな。おひさまのエネルギーで地球はこれだけの活動をしていられるし。人間が生きていられるのも波動だろうしね。我々がやっていることは、それを利用して音を出しているような。人間のやることはそれに至らないのだけど、大自然の法則に近づかないといけないのかなって。だからいつも最善・最良の方法を学んでいって、止まることはないですね。どんどん完璧になっていきたいと思っています。

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ー どのような音づくりを目指していますか?

田口:
音の再現・再生ということが仕事じゃないですか。スピーカーは擬似的な再生装置で、マイクを通して大きくなった音が果たして本当に素直に大きくなっているのか?遠くで歌っているのだけどちゃんと聴こえる。うちの音はそんな音です。
今は平面スピーカーにこだわっていて、素直に音を出す世界で一番新しい自然な方法です。平面だと素直な波面を出しやすく、それがきれいな音になります。
音って面白くて、どんなに体の不自由なお年寄りでも、子供でも、いい音はいいってわかるからね。美味しいものは美味しいですから

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ー ものづくりにおいて大切にしていることを教えてください。

田口:
一番好きなものや一生愛されるものを作っていかないとダメでしょ?人間がもっとピュアになっていかないといけない。そこを極めていきたいね。例えばオーディオマニアは海外の有名なものを持っていれば間違いないとか、生産終了の骨董品のような古いものを持っているから良いと言っている人も多いのだけど、そんなのつまんないじゃない。どんどん脱ぎ捨てて、新しい光の世界に突入しないといけないのではないですか?今はメイドインジャパンで世界に誇れるものが出来たと思います。でももっと進化しますよ。みんなが感動する音を聞かせたいと思っています。

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02 暮らしに寄り添う無指向性スピーカー「セレンディピティ・シリーズ」

主にプロ用オートクチュール商品としてつくられて来たTaguchiスピーカーに、ある時、異変が起こります。当時、田口さんのもとで働いていた牟田口景さん(現WHITELIGHT. Ltd代表)は、「セレンディピティ・シリーズ」というコンシューマー向けのスピーカーを開発したのです。この商品の登場により、Taguchiスピーカーが一般に知られるようになりました。同シリーズのディレクターである牟田口さんから、商品の誕生秘話をお聞きしました。

ー 「セレンディピティ・シリーズ」とはどんなスピーカーですか?

牟田口:
田口さんが作った理論と哲学を、僕らの都市型のライフスタイルに合う家庭用スピーカーとして再構築したものです。田口さんは常に新しいものをつくっているので、まったく完成形がないというか。田口さんの爆発寸前のものを、キュッキュとむりやり形にして完成させたのですが、僕の中ではすごくエキサイティングで面白いプロジェクトでした。10年、20年、100年経っても工場の職人さんがつくれるTaguchiスピーカーという形で、この世に残ればいいなと思っています。

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ー 特徴的な形をしていますが、デザインや素材はどのように決めていますか?

牟田口:
これまでに田口さんは、仏閣系や気象観測用、騒音対策システムなどの様々な用途のスピーカーをつくって来たのですが、家庭用スピーカーもTaguchiらしいものが欲しいなと考えると、無指向性のスピーカーに行き着きました。多面体だったり、円錐型の反射盤をつけたりして、音を反射させながら空間全体で音を聴くという点音源の理論を持ったスピーカーです。素材は北欧圏のバーチの合板を使っています。合板は密度が均等に保てるところも大切なポイントです。

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ー この商品がユーザーにとって、どのような存在になることを望んでいますか?

牟田口:
単純に音を再生するための機械というよりも、精神的に寄り添ってくれるような。音楽は聴く人自身の環境とか心情に応じて変わっていくじゃないですか。椅子や机のように実際に手で触れて使うものではないけれど、より一緒にいるような感じがしますしね。相棒のような存在でしょうか。

セレンディピティ・シリーズ

03 新たな音楽表現の可能性「音の森」

音のフロントランナーとして走り続ける田口さん。田口さんの理論と精神を受け継ぐ商品を開発した牟田口さん。今、この二人が新たな音の可能性として挑戦していることがあります。それは、マルチチャンネル音源と複数のスピーカーを使って、音を空間として表現する「音の森」 というテーマです。田口さんと音響クリエイターの宮本宰さんは、64chのマルチ音源と64個のスピーカーを使った「シンフォキャンバス」というインスタレーションを共同開発しています。進化の鍵はスピーカー・テクノロジー。最後に音の可能性についてお二人にお聞きしました。

「音の森」のインスタレーション風景

ー 「音の森」の可能性や想いを聞かせてください。

田口:
普通は2チャンネルでいいと言われるけど、うちは今、64チャンネルでやっています。もっと面白い世界を作っていきたい。音ミュージアムでもいい。ただ音楽を聴くだけでなくて、ヨガのように精神的にいいとか癒しになるとか。医療的にも効果があれば面白いよね。もっともっと考えていくと良い世界が出来そうだから。

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ー 内田さんご自身の未来について聞かせてください。

牟田口:
これからは、空間のための音を作る人という新しいタイプの作曲家がどんどん出るのだと思います。でもそういう人たちは環境がないから育たなくて。そういった環境を作っていくのが、スピーカーなどのハードをやっている人たちの役割というか、我々の使命だと思いますね。


田口音響研究所株式会社

サウンドシステムで最も重要な構成部品であるスピーカーユニットとエンクロージャー全て日本国内で研究開発、製造する専門会社。主な導入事例として、京都西本願寺、表参道ヒルズ、Blue Note Tokyo、国立劇場、日本科学未来館、ユニバーサルスタジオジャパン、THE NORTH FACE国内全店舗、VENT TOKYO等がある。

http://taguchi-onken.com/

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スピーカー(セレンディピティ・シリーズ)に関するお問い合わせ

株式会社タグチクラフテック

TEL:045-805-6361
FAX:045-805-6362
MAIL:info[AT]taguchi-craft.com
http://www.taguchi-craft.com/


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